Admin   *   All archives

    大阪府箕面市に本部を置く「社会福祉法人あかつき福祉会」からのお知らせと最新情報

    【ささゆり園】平成28年度「地域で生きる」障害者問題市民講座~相模原障害者市民殺傷事件を考える~  

       平成29年3月10日(金)、午後6時30分から、箕面市立障害者福祉センターささゆり園にて平成28年度「地域で生きる」障害者問題市民講座を開催しました。
     すでにご承知のとおり、昨年7月、神奈川県相模原市の障害者支援施設において、19人の尊い命が奪われる大変痛ましい事件が発生いたしました。しかし、事件発生から半年以上が経過した現在、多くの市民にとっては、過去の出来事になりつつあります。
     お名前さえ公表されることなく、理不尽に奪われたかけがえのない命、19とおりの人生、そして今も彼の地で生活されている利用者の方々、職員、ご家族の心境を思うと本当に心が痛みます。
     事件を風化させないためにも、背景や深層を探り、重い障害のある市民が地域で生きることの意味を問い直したい、そのような思いで今年の市民講座を開催しました。

                                                0529-001.png

                                                0529-002.png

       まず最初に、特定非営利活動法人おおさか地域生活支援ネットワーク理事長の北野先生よりご講演いただきました。
       豊富な資料・データに基づき、事件の背景・問題点に対し、本人支援のスタンスで鋭く切り込んでいただきました。
       ご発言の一部を紹介させていただきます。

    ●外部の人間ではなく、3年半の従事経験のあるスタッフによる犯行。問われる職場環境、育成の在り方
     ・指導・教育的、訓練的、または恩恵・救済的な支援ではなかったか? 検証が必要。
     ・虐待的な対応・支援に対して、指導・育成できなかったのか?=全国の事業所が問われている。
    ●どこで、誰と、どのように生活したいか? 本人の意思を無視した支援は、支援者、家族を問わず虐待である。
    ●虐待防止法:ネガティブな支援の防止、差別解消法:ポジティブな支援の推進。
    ●意思決定・表明支援の重要性(前提は豊富な選択肢があること)
     ・選択肢を創ることが大切、お題目の地域移行ではなく、GHや生活支援等国制度の充実が必要。
     
       とりわけ「事件の深層は、人々の心(無理解、偏見、差別心)の中にある」とのお言葉は、深く響きました。

                                               0529-003.png

       続いて、伊丹市にある有限会社しぇあーど取締役の李国本さんよりご報告いただきました。
       スクリーンに映し出されたキラキラ輝くたくさんの命。
       胸が熱くなりました。
       ご報告の一部を紹介させていただきます。
    ●「支援者」という言葉はとても嫌で、おぞましく、恐ろしい。
    ●入所施設があかんとか、地域が良いとか、住んでいる場所の問題ではない。「それなりの理由があるから入れるんや」というご家族の「言葉の重み」をどう感じとれるか。
    ●9時5時のサラリーマン支援者が何を語るのか? きれい事の「地域移行」なら誰でも言える。阪神淡路大震災当時の青葉園の実践の凄さ。
    ●生きる、ただただ生きるということ。「勝手に決めるな! なめんなよ!」という利用者さんの声。
    ●「障害者」とか「重い障害」とかではなく、「人」として地域で生きることの意味をこれからも問い続けたい。

       実践に基づく重みのあるお言葉、一言一言が深く、沁み入ります。

                                               0529-005 (2)

       最後に、社会福祉法人西宮市社会福祉協議会の清水常務理事さんよりご報告いただきました。
    ●この事件は障害者支援の現場で起こった。社会の価値観をかえていくこと、その価値観を社会化していくこと等、我々の思いは幻想であったのか? とてつもない罪悪感、無力感。しんどかった。
    ●しかし、重い障害のある方達が西宮に存在したからこそ、地域に質の高い支援ネットワーク、地域医療システムが生まれた。これは理想論ではない。紛れもない事実である。
    ●阪神淡路大震災当時の状況(入浴1つとっても、障害が重いとか、ボランティアとか学生とかは関係なく、風呂にはいっていない者、汚い順に近隣で入浴する状況)→その後、障壁の出現により分離された状況・市民には見えない→支援者による本人の客体化・市民の逃避的無関心→相互ディスエンパワメントによる破滅・希望のない社会の出現、事件の本質はそこにある。
    ●この状況の中から、それでも新たな希望をもって取り組む。極めて楽観的に。
    ●本人の存在価値に基づく、本人中心の支援の展開、ひとつひとつの物語の積み重ねから真の共生社会の実現をめざす。
     熱い! 熱すぎる清水さん節全開のお話で、会場のボルテージはマックスに!!

                                               00529-04.png



       慌てて資料を増刷するほど沢山の方々にご参加いただきました。
       また、アンケート結果から「時間が足りない」「次回続編をお願いしたい」等のご意見を多数いただきました。

      最後になりましたが、自分達の日々の姿勢、取り組みが問われるこの重く困難なテーマに対して、ご尽力いただきました講師の北野先生、李国本さん、清水さん、本当にありがとうございました。

       決して事件を風化させることなく、障害の有無に係わらず、ひとり一人の存在が心底尊重される「共生社会」の実現に向け、私達ささゆり園スタッフも、気持ちを新たに今できる実践を続けていこうと思います。


    (箕面市立障害者福祉センターささゆり園長 加藤)

    カテゴリ: こんなことしました

    Trackback: --   コメント: --